ゲゲゲの女房(貧乏という名の魔物)

ゲゲゲの女房」ではしげるの人生が大きく変化しようとしている。

貸本漫画では生活できない状況の中、相変わらずしげるは漫画を書く手を休めない。

そこへついに大手出版社少年ランド(マガジンかな?)への漫画の依頼がくる。

貧乏に継ぐ貧乏で喉から手が出るほど金の必要な中、しげるはその依頼を断る。

 

「自分は宇宙モノは得意じゃありませんから」

 

子供に当時いちばん受けている宇宙モノの提示を出版社はしてきたのだが、しげるは得意としないジャンルをはっきりと断った。

大仕事を断ったしげるを周りの人間は非難するが、しげるは言う。

自分が得意としないジャンルでは勝負しない、それで失敗すれば自分は一生貧乏から抜けられないと。

 

私の好きな漫画に「迷走王ボーダー」という漫画がある。

この漫画の主人公蜂須賀はとにかく変わった男で今は使われていないトイレに住んでいる。

通称便所部屋の3000円の家賃が魅力だと彼はいうが、あえて貧乏を選んでいる男だ。

ある日トイレだと勘違いして入ってきた客にトイレの世話をしてあげるのだが、そのお礼に彼らは1000円札を渡そうとする。

10円もないようなど貧乏の蜂須賀だが、

 

「その金を受け取っちまったら俺の将来は見当がついちまうじゃねぇか」

 

と、あっさり断る。

食うや食わずの状況でだ。

 

そして大観の時代になると20億相当にまで跳ね上がる絵が、北斎の頃はかけそば1杯分の値段であったそうだ。

それでも北斎は、北斎という雅号を売ってまで貧乏を舐め続けた。

平均寿命が50年という江戸時代に90歳まで生きた北斎だが、死に際にはこう言い残した。

 

「あと5年あったら俺は本物の絵描きになれたのに」

 

もちろん貧乏が美徳とは思わない。

麻酔もないまま腕を戦場で切り落とされた水木しげるでさえ、戦争より貧乏の方が大変だったと語るほどである。

が、しかし凄まじい貧乏をくぐり抜けてきた人間の方が味があるのはなぜだ。

ぎりぎりのどん底で自身が選ぶもの。

さぁそれはなんだろう。

 

自身の漫画を貫くため大きな仕事を断ったしげる、そしてあの仕事中の集中力。

その気概に鳥肌が立つ。

ゲゲゲの女房 完全版 DVD-BOX1

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