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文学的商品学

『文学的商品学  斎藤美奈子』 2004年

 

小説をストーリーや人物という部分から観るのをやめ、あえて「モノ」をどう扱っているのかという視点で捉えた文芸評論。

今回分けられたテーマは「ファッション」「食べ物」「ホテル」「バンド」「野球」「貧乏」

語られる作品は82作品。

さらっと読み過ごしてしまうところもそこは見逃さないのが斎藤美奈子

 

今回は「モノ」というテーマから語られているが、あまりに細かいといえば細かい。

彼女はあの「失楽園 渡辺淳一」の主人公の洋服に着目した(いや、してしまった)

この小説の洋服の描写を、これはあくまでもどんなものを着ていたのかという

「報告」であって決して「描写」ではないと。

しかも洋服が古臭く格好悪すぎて「ファッション」ではないと。

いや、斎藤美奈子にかかれば渡辺淳一もこんなものなんですよ。

 

こんなところまで読んでしまうのってところが斎藤美奈子

そんなところまではいいじゃないのかと思う方にとっては少々胃もたれ気味であろう。

が、もしやこれから純文を目指す方々にとっては頭に入れておきたい本であることは確かだ。

 

彼女は林真理子(女史)の作品についても触れ、あまりの洋服や着物の描写の鋭さについて語っている。

もっとも彼女はこの「モノ」を登場させることの多さに「カタログ小説」と呼んでいるが・・・。

ひとつここで私は林真理子(女史)について思ったことがある。

林さんが今まで強欲なまでに洋服だ着物だを買い集め、フランス料理まで習いにいき贅の限りをつくしているように見えたが、もしかしたら彼女は小説に質感をもたせるために(茂木健一郎でいうところのクオリアね)それらを執拗なまでに行なってきたのではないかってね。

 

巻末のクリエイティブ・ディレクターの佐藤尚之さんの解説が良い。

文芸評論家には「作家に向かって書いている人」「自分に向かって書いている人」そして「読者に向かって書いている人」の3種類あると。

斎藤美奈子はこの数少ない「読者に向かって書いている」評論家であると述べている。

いい表現ではないですか。

作家に向かって書くラブレター型ではなく、自分に向かって書くマスターベーション型でもなく、読み手を意識しての書き手であると・・・。

 

だから斎藤美奈子はいつまでも自由なのかもしれないな。

ん?最近もそうなのか?

文学的商品学 (文春文庫)

文学的商品学 (文春文庫)