死の棘

『死の棘 島尾敏雄

 

先日病院へ行った。

なんのことはない検診なのだが、駐車場に車を止めたとき隣の車から出てきた女性が気になった。

ボサボサの髪はひとまとめにして抑え、洋服もバックもなぜか

ちぐはぐ。

とりわけ気になるのは足。

真紫のストッキングにベージュのサンダルなのである。

 

他人のファッションのことをとやかく言う立場ではないが、その女性とまた受付で一緒になった。

付き添っていた男性が受付に「産科に通っているのですが、さらに精神科で診ていただくよう先生に言われてきました」といっている。

そして私が読もうと思って持っていた本は「死の棘」であった。

 

死の棘・・・・・気になるタイトルである。

聖書の言葉だそうだ。

この本の名はずいぶん前から知っていたと思う。

しかし作者の名前を知ったのは恥ずかしながら今回が初めてだ。

 

これは自分が愛人をつくってしまったのがきっかけで妻の心が壊れていく私小説である。

登場人物の名前も家族構成も変えることなくそのままを描いている。

最初から最後まで通して書かれているのは、延々と続く終わりのない妻との喧嘩である。

子供たちはそれを「カテイノジジョウ」と呼ぶ。

 

一人で出かけると妻が愛人に会いに行ったと勘違いし精神に異常をきたすため、彼は仕事にさえ妻と子供二人を連れて出かけていった。

そんな状態だから仕事ももらえず家族は着の身着のままで着替えさえ買ってやれない。

妻の頭の中にはいろいろな「ギモン」が湧いてきてそれを制することができない。

外でもかまわず妻の様子は変になりつられて本人まで頭の状態がおかしくなってしまうため、夫婦も子供たちでさえ、人々からキチ○イと呼ばれることに慣れてしまう。

 

どこの家庭にもある揉め事の延長線上にあるもの。

裏切られた妻が持つ感情はひとそれぞれなのかもしれないが、人間何がきっかけで不安が襲い少しずつ壊れていくのかわからない。

現在心あたりのある方にはとっても怖い小説になってしまうことだろう。

この小説のもととなった日記も出版されております。

小説を読み、はまってしまった方は併せて読んでみてはどうか。

かなり詳しくかかれている日記だー(重いからちょっとね)

死の棘 (新潮文庫)

死の棘 (新潮文庫)