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白痴

『白痴 坂口安吾』である。

 

安吾は(呼び捨て)「堕落論」に続いて2作目。

以前「堕落論」で興奮した記憶があるが、あれからずいぶん経ち今読んだら違う感想かもしれない。

 

伊沢は新聞記者で映画の演出家。

伊沢の借りている一室の近くには、相手の分らぬ子供を孕んでいる娘や妾やら淫売やら過去に人殺しだったやつらなんかが住んでいる。

しかし一番変わった人間は隣の夫婦で亭主は気○いで(書けません)女房は白痴だ。

ある日、伊沢が家に帰るとその白痴の女房が自室の隅に隠れていた・・・・。

白痴の意思はいかに、コミュニケーションはいかに。

わけわからんけれど戦争のさなかだからもっと人間わけわからん・・・的な話。

 

別な作品で「いずこへ」ってのがございますけど、こちらは自分が落伍者でどうたらとか女の肉欲がどうたらとかぐだぐだーっと書いてあります。

いずれどちらの作品にも落ちはなく、最後はすこんとぶん投げられる感がございます。

これぞ文学というなら文学なんでございましょう。

 

この「いずこへ」のなかに彼の芸術に対する考えのようなものが載っておりますので、最後に引用させていただきます。

 

「真実の価値あるものを生むためには、必ず自己犠牲が必要なのだ。人のために捧げられた奉仕の魂が必要だ。その魂が天来のものである時には、決して幇間の姿の如く卑小賤劣なものではなく、芸術の高さにあるものだ。そして如何なる天才も目先の小さな我欲だけに狂ってしまうと、高さ、その真実の価値は一挙に下落し死滅する」

 

だ、そーだ。

白痴 (新潮文庫)

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